コラム

ポリネシアン諸島のトライアングル地域の中心、通常タヒチ(ソシエテ諸島)と呼ばれる島々は、有人・無人を問わずに数えると800以上の島々が連なっているといわれています。

島々には名前が付いていない小さなものから世界中の人々が憧れる有名な観光地タヒチと呼ばれる大きな島までが点在していますが、良く知られている島は首都パペーテがある「タヒチ島」や、タヒチアンソングでたびたび主題となる島「ボラボラ島」「モーレア島」が有名です。

ハワイやニュージーランド、サモア、フィージーなどのそれぞれの島特有の魅力的なオリジナル手工芸品は沢山あるのですが、今回はタヒチに昔から今に至り代々種族に受け継がれている手工芸品に絞ってお伝えします。

どれもこれも芸術性が高く、ストーリーに満ちていて単なる観光地の「おみやげ品」だけでは収まらない品ばかりで興味がつきず、全部は書ききれませんが割と皆さんが見聞きした事のある工芸品を選びました。

Pareo(色彩豊かなパレオ)

パレオ(サロンとも呼ぶ)とは色とりどりに染色された布で、用途は多種多様でタヒチの各家庭には必ず複数あるばかりか、男女問わずに1人に一枚以上は持っているタヒチアンの生活に密着した必須アイテムのひとつ。

パレオは昔のタヒチアンが腰や体に巻いていた木の皮を叩いて柔らかくして布状にした(タパ)を、タヒチ語で「パレウ」と呼んでいたのが「パレオ」と発音されるようになったと言われています。

一般的な作り方として水で濡らした染色済みの長方形の布(だいたいの寸法は90~110センチ✖️180センチ)の上にタヒチ特有の植物や動物の型紙を乗せて、強い陽射しの下で乾かしたら型紙を外せば出来上がりというシンプルな工程で仕上がります。

もう一段上の作り方は直接染料で布に手書きする方法で、これはある程度の技術が必要なのと製作に時間がかかり、デザインモチーフも凝っているのでので販売価格は高価です。

他に版画のように模様を1枚、1枚刷り込む方法もありますし、工場で機械的にプリントされるお手頃価格のパレオもあります。

用途は幅広くタヒチアンダンスの衣装や、レッスン着、壁掛けやベッドカバー等々人それぞれの使い方があり、ワンピースドレスのように体に巻き付けるスタイルパターンは複数あるので地元の女の子や観光客にも人気があり、リゾートホテルのディナショーの合間にはパレオの巻き方をレクチャーしてくれるシーンもありゲスト達に喜ばれています。

柄のモチーフになるのは、タヒチ特有の葉っぱ、花、木などの植物や、海の中の生き物を使い目にも鮮やかな色彩に圧倒されます。


型取り製法のパレオ

Natira’a(ナテイラア 手編み)

タヒチアンダンサーが手編みの帽子をかぶって華やかに踊っているのを見た事がありますか?
どの島でも手編みの作品は作られていますが、オーストラル諸島の中の「ラパ島」「リマタラ島」「ルルツ島」の女性達が作る手編みの帽子やバッグ、ラグ、バスケットなどのクラフトはとても繊細で美しい伝統工芸品として広く知られています。

材料はパンダナスの葉(ペオレ)、葦、若い椰子の葉(ニアウ)、竹(オフェ)などで それを干したり、乾かしたり、裂いたりして作る物に合わせて紐状にして編んでいきます。

葦以外は他の島でも手に入るのですが、葦だけはラパ島にしか生息していないので葦で作られたクラフトはとても貴重で、まるでレース編みのように繊細に編み込んでいける人が少ない事もあり、こちらも販売価値は高価ですが、「世界にたったひとつ」の宝物なので納得です。

この「ラパ島」の葦編みは製作者の先祖代々からの編み方があり、その作り方は門外不出とされているそうですし、ひとつの作品を完成するには崖に登り、葦を摘みに行くところから始まり選別、手洗い、干したり伸ばしたりと編み始めるまでにも長い時間が必要です。

毎年タヒチ島ではクラフト展が開催され観光客のみならず島の人々の楽しみなイベントとして定着していて、タヒチアンダンスの衣装の一部(髪飾り、ネックレス、ブラやベルトなど)にも使われています。


伝統的な手編みのタヒチアンハット

Tifaifai(ティファイファイ タヒチアンキルト)

日本でもファンが多く馴染みのあるハワイアンキルトの基本になっていると言われるのがタヒチアンキルト「ティファイファイ」で、ハワイアンキルトがチクチク針をひと針づつ刺していくのと異なり、タヒチアンキルトはアップリケとパッチワークです。

ティファイファイには、アップリケを貼った「ティファイファイ.パオティ」とパッチワーク仕様のティファイファイ.プー」の2種類があり、どちらも鮮やかで色彩豊かな仕上がりが特徴で、ベッドカバー、クッションカバー、壁掛け、赤ちゃんの肌がけなど多種多様です。

モチーフデザインはタヒチアンの生活の中にある馴染みの深い植物類が多く、ハワイアンキルトよりは大きめの柄を使用して、ザックリと大胆に作られています。

ティファイファイとはタヒチ語で「縫い合わせる」という意味がありますので、結婚祝いにプレゼントしたりパレオ同様タヒチの人達にとって用途の多い大切な伝統工芸のひとつです。


色鮮やかなタヒチアンキルト

Palau & Pupu(パラウとププ 黒蝶貝と小さな貝)

パラウと呼ばれている黒蝶貝はタヒチアンジュエリーの代表的な貝細工アクセサリーのひとつで、ネックレスやペンダント、ブレスレットなどの装飾品の他にタヒチアンダンスのコスチュームにも使われていたり、黒蝶貝で装飾された家具類もあります。

他のタヒチアン手工芸品と並び、黒蝶貝で作られた作品にはその技巧の繊細さ、完成品の美しさにじっと見入ってしまう魅力があるのです。

アート作品としての黒蝶貝を使った装飾品は昔ながらの工芸品職人が魂を込めてひとつ、ひとつ掘り上げるので、資産価値も充分にあります。

Poe Rava(ポエラブァ タヒチアンパール)

貝細工の工芸品の他にもタヒチには粒の大きな黒く輝くタヒチアンブラックパールが有名ですが、タヒチアンパールは色も姿形も複数あり、それぞれが本当に美しく現在のタヒチでは観光業の次に大きな経済力になっています。

美しいタヒチアンパールは透明度の高い澄んだラグーンでしか質の良い貝が育たない為、ツアモツ諸島やガンビエ諸島での養殖が多いようです。

本物のタヒチアンパールのジュエリーはやはりとても高価で中々手にするチャンスは少ないのですが、観光客用のお手頃値段のフェイクパールも多数あり気兼ねなく身に付けたり、バッグやベルトの飾りにするのも有りだと思います。

今回のまとめ

ざっと駆け足でタヒチが誇る伝統手工芸の数々を紹介しましたが、タヒチには他にも多くの特別なアートがあり、日々それぞれの手工芸を受け継ぐアーティストが生まれ育ち世界中の人々にタヒチアンソウルの魅力を伝えているのです。

タヒチアンダンス、タヒチアンミュージック、タヒチアンタトゥ、タヒチアンの特別な料理…などなど…
次から次へとタヒチアン文化への興味が湧いてきます。

人々の手に届きやすい機械で作る工芸品を決して否定するものではありませんが、いつかは先祖から引き継がれたそれぞれの手工芸品を手に取り「タヒチアンソウル」を感じて下さい。

今後も各方面からタヒチ、ハワイ、ポリネシアン諸島の文化を深堀りしていく予定です。

Rinko

ブログ
コラム
インスタグラム